ねこ
仕事からの帰り道によく会うネコ
その時間は雨が降っていたので、屋根のある場所にネコが居たのだが、私というヒトがネコの視界に入るなり擦り寄ってきた。
寒いのかな?と思ったらニャーニャーと鳴きながら向こうのほうを見ている。
視線の先は――今居る屋根の無い場所から少し歩くとある――草むらだ。その草むらはよくネコがくつろいでいる場所なので、草むらに行きたいけど雨にぬれたくない、だから傘に入れてくれと要求しているのだなと合点がいき、私はネコを傘に入れて、草むらまで歩いた。
ああ、これで自分の役目も果たした。雨も降っているしはよう帰ろう、とネコから離れるとそのネコが私のほうを振り返り「なんでそっち行くん?」とばかりに見つめてニャーニャー鳴いてくる。「いや、だって私も家帰りたいし」と私が答えると、痺れを切らしたネコが駆け寄ってきた。
「えー、もうどうしたん……」困ったように話す私だが、ネコ好きのあなたならばお分かりいただけるであろう、内心ニヤニヤしていた。ヒトの心を掴む術を心得ているネコにばっちり陥落中だ。なおも構え構えとニャーニャー鳴くネコ。
しかしネコ好きとはいえ、私にも私の予定がある。「ごめん、もう帰るわ。また明日な」と心を鬼にして帰ったのであった。
これが今日起こった私とネコの謎の駆け引きである。